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DESTINY:シン/title by 選択式御題
ヒロイン=FAITH。
シンがステラを帰した辺りの話。

 艦に残っていたレイに続いて、帰投したシンも営倉入りを命じられたと聞いて、わたしは二人の元を訪れた。「全く、あんたたちも馬鹿なことやったわね」。冷やかすように言えば(実際、呆れてはいる)、二対の視線がわたしを捉える。

「……あなたも、わざわざ説教しに来たんですか」
「ん、ああ、てことは、やっぱりアスランもここに来てたの」

 レイは何も言わず静かにわたしを見、シンは威嚇するようにわたしを睨んだ。紡ぐ言葉も、その視線に違わずひどく刺々しい。けれどわたしはそれを受け流し、ただ、確かに途中でアスランとすれ違ったなあ、とか、そんなことを考えていた。

「あの子が何を言ったのかは知らないけど。でもまあ、わたしはこれでよかったのかもって思ってるわ」

 射殺すようなシンの視線が、驚いたようなそれに塗り変わる。わたしが何を言っているのかわからないとでも言いたげだ。艦長には(そして、もしかしたらアスランにも)散々その行動を否定されただろうから、意外だったのかもしれない。
 けれど、わたしはそこまで出来た軍人ではない。あの少女がハイネを墜としたガイアのパイロットだろうと、連合のエクステンデッドだろうと、MSを降りた生身の彼女を前にして、生体サンプルだの何だの言うには抵抗がある。そもそも、彼女もわたしも等しく加害者なのだ。それはつまり、彼女をぞんざいに扱うということは、自らも同じ扱いを受けて然るべきだと認めることに他ならない。
 とは言え、わたしだって二人のしたことを褒めることはできない。二人の処分が確定するまで(場合によっては確定することで)、わたしの気が休まることはないからだ。

「って言っても、普通なら即銃殺刑よ? あんまり心配させないでちょうだいな」

 腰に手を当てて、怒っているのだとポーズで示す。二人は答えない。わたしは思わず溜息を吐き出した。「シン。返事は?」。そうして少しだけ語調を強めれば、「……はい」。観念したようにシンが言う。「レイも!」。続いてレイに視線を遣ると、「はい」。レイはいつもと同じように静かに言った。「ん、よし!」。満足したわたしは格子の間から腕を突っ込んで、一度ずつ、二人の髪を撫でた。

***

 けれど。営倉を後にして、わたしは思考を再開する。
 連合に帰った彼女は、再びわたしたちの前に立つだろう。勿論、今までと変わらず敵として。そうなれば、きっとシンはまたつらい思いをしてしまう。MSに乗ってしまえば、顔さえ見えなくなってしまえば、おそらく誰だって(あの少女だろうが他の誰かだろうが目を閉じ耳を塞いで知らないフリをして)殺せるわたしと違って、あの子は優しすぎるから。

(こんなこと言ったら、シンは絶対怒るわね)

 シンが彼女を撃てなくても、彼女を救いたくても、もしも彼女がシンを撃つのなら。わたしはきっと躊躇うことなく彼女を殺す、だなんて。


(わたしは身勝手だ)(誰かの未来を奪い続けなければ生きられない)
 

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