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ヒロイン=先輩パイロット。
正直ハイネさんとヤキモチ焼くシンが書きたかっただけ。
「あ、アスラン! ……と、あれ、ハイネ? なに、もしかしてミネルバに配属になった?」
「久しぶりだな、破壊天使。またよろしく頼むぜ」
「ちょっと、もう! あんたの言い出したそれ、何か妙に広まっちゃってるんだけど!」
「何だよ、嬉しい限りじゃないか」
「わたしは嬉しくないの! 大体何なの、天使って……恥ずかしい。アスランも笑ってないで何とか言ってやってちょうだい」
ハイネと軽口を叩き合って、時々困ったように笑うアスランに無茶振りをして。そんな風な益体もない言葉の応酬をしながら、艦長に挨拶に行くところだと言う二人をエレベーターまで見送ったわたしは、結局、「いつかわたしがあんたたちにも恥ずかしい異名を付けてやるんだから!」なんて、閉まる扉に向けてそんな捨て台詞を吐いた。ハイネは笑って、とばっちりを喰らったアスランは困った顔をしていた。わたしも笑った。
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦以降、ハイネもわたしもFAITHに任命されて、任務が重なることなんてなかったから、こうして同じ艦に乗るのは本当に久しぶりだ。以前は顔を会わせる度に繰り返していた筈の馬鹿らしい会話も、何だか懐かしい。まあ、そんな懐古に浸っていられるような状況でもないのだけれど(それでもやっぱり、ハイネがいると雰囲気が軽くなる)(アスランはちょっと真面目すぎるのよね)。
射撃訓練でもしようかしら、と、センチメンタルな気分を振り払ってわたしは踵を返す。すると、いつからそこにいたのか、廊下に立ち尽くすシンと視線がぶつかった。
「……あのひとと知り合いだったんですか」
「ええ、わたしもホーキンス隊だったから」
わたしは端的に言葉を返す。シンは「ふーん」だとか納得したような相槌を打ったものの、本当に訊きたいことはそれとは別にあるようだった。
「もしかして、ヤキモチ焼いてくれてるの?」
軽快なステップでシンの傍まで近付いて顔を覗き込む。そうだったら嬉しいのになあ、という期待を多分に含めて訊けば、「ちが、」「違うの? だったらなぁに?」「……わ、ない、ですけどっ」。ぷい、とそっぽを向かれてしまう(素直じゃないなあ)(ま、そこが可愛くもあるのだけどね)。「シン?」。もう一度こちらを向かせようと手を伸ばす。けれど、触れる前に、その手はシンに引き寄せられて。
「ずるいですよ」。隙間もないくらいにぴったりくっついて、シンが耳元でぼそぼそと拗ねたような声を出す。「わかってるくせに、そんなこと言って、」。「わからないから訊いてるんだもん」。わたしはそれにおどけて答えながら、それでもまだ足りなくてシンを抱きしめ返す。「言ってくれないとわからないわ」。すると、シンが小さく呟いたのは、
「…………どこにも、行かないでください」
(ああもう、どうしてそんな可愛いこと言ってくれるの!)