忍者ブログ
[35]  [34]  [33]  [32]  [31]  [30]  [29]  [28]  [27]  [26]  [25
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

DESTINY:シン/title by 選択式御題
ヒロイン=先輩パイロット。
19話のミーアライブの辺りを捏造した話。

 高く澄んだソプラノが歌を紡いで、詰めかける群集は熱狂的な歓声に包まれる。そんな中わたしは離れた場所からただぼんやりと、派手なピンク色をしたザクウォーリアのてのひらの上でくるくると踊る少女を眺めていた。
 「ラクス・クライン、か」。口の中だけで小さく呟く。再びわたしたちの前に立って歌うようになった彼女は、以前とは全く異なった雰囲気を纏っている。年相応になったと言うか何と言うか、それこそ別人のように。と言っても、アスラン経由で一度会ったことがあるくらいで、わたしは彼女の何を知っている訳でもないのだけれど(……そもそも、あのときどうして会うだなんてことになったのだっけ)。あの大戦を経て何か心境に変化でもあったのか、はたまた『歌姫』としてのキャラクターの路線変更だとか夢のない事情か。まあ、考えられるとすればその辺りだろう。
 歌姫も楽じゃなさそうだ――なんて、そんな下らないことを考えていると、ふと、人だかりの後方に見知った寝癖頭を見つける。「…………」。わたしはどうやらそれが面白くないらしい。なんとなくモヤモヤと割り切れない感情が胸中にわだかまり、じっとしていられなくなったわたしは小走りにそのひとに駆け寄って、ぺふり。その背中を軽く叩いて、隣に並ぶ。

「……シンも好きなの?」
「何がですか?」
「ラクス・クライン」
「俺は、まあ……普通です」
「ふーん、そっか」

 普通、ね。嫌いではないにしろ、積極的に好きだと主張する程ではないということかしら。とか、そんな風にひねくれた解釈をして、一人で満足。「それがどうかしたんですか?」。そのくせ、シンの問いかけには「ん、別に」。なんでもないフリをして言葉を返してみたり。

「別にって……でもなんか、おかしいですよ。機嫌悪いのかと思ったら、急にそんな嬉しそうだし」

 わたしはぱたぱたと瞳を瞬く。「そうかしら」。そんなに露骨な態度だっただろうか。しかし、確かに今はすっかり気持ちも晴れて気分がいい。「……でも、うん。そうかも」。冷静に考えてみれば、あの感情の正体は明白だった。

「つまりは、ただのヤキモチなんだわ」

 わたしが独り言のように呟くと、「っ、え? あ、」。シンは一瞬呆けたような顔をして、それからすぐに、ぱっと視線を逸らしてしまう(……もう、なんでシンが照れるの)。けれどわたしはそれが何だか楽しくて、ヤキモチもそんなに悪いものじゃないのかしら、なんて、そんなことを考えていた。


(誰より何より、君を愛してるの)(独り占めしたいくらいに、ね?)
 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
☆カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
☆プロフィール
HN:
壱原緋凪
性別:
女性
☆バーコード
☆ブログ内検索
design[dot×dot]
忍者ブログ [PR]