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黒執事:シエル/title by 選択式御題
ヒロイン=人外メイド。
アニメ一期の何話だったかを見てて思い付いた話。

「もう二度と坊ちゃんに関わらないと誓いなさいな。そうすれば、命まで取ることは致しませんわ」

 地面に這いつくばる男共を見下ろして、私は低く低く声を落とした。
 途端にそいつらは悲鳴を上げて、私に背を向けることすら厭わず散り散りに走り出す。その無様な姿を見送りながら、たまらず吐き出されるのは鋭い舌打ち。
 あんな奴らが坊ちゃんの領域を侵すのが赦せなかった。あんな奴らが坊ちゃんを狗と呼び嘲るのが赦せなかった。たとえそれが事実だとしても、坊ちゃんの名はあんな奴らが軽々しく呼んでいいものではないのだ(お前達が坊ちゃんと同じ地面の上で同じ空気を吸って生きているというだけで、私にとっては耐え難い苦痛だと言うのに!)(いっそ全て殺し尽くしてしまえたら、)。
 募る苛立ち。暴走する思考。その最中、ふと、自らの(まっかに、よごれた、)てのひらが視界に映る。
 ……嗚呼、きちんと汚れを落としてから屋敷に戻らなくては。こんな姿、他の使用人達はおろか坊ちゃんになど見せられない。
 ふわりと、自然に口元が綻ぶのを自分でも感じた。
 屋敷のことを考えるだけで、胸中が嘘のように穏やかになる。ただ、愛しかった。坊ちゃんが、坊ちゃんの大切なものが。何もかもを、守りたいと思えるほどに。

「……私は坊ちゃんの駒。坊ちゃんを、坊ちゃんの大切なものを守る為なら、喜んで捨て駒になりましょう。だからどうか、笑ってくださいまし」


(私には貴方に笑顔を差し上げることができないから、)

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