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捏造栞エンド。姉妹愛に取れなくもないですが百合です。
「全部いらないの。全部捨ててしまうの。そうしたら、ずっとふたりで、ここにいられるでしょう?」
表情を変えないままで、栞が淡々と言葉を紡いだ。
わたしは応えず、ただそっと栞の頬に手を伸ばす。まるで陶器のように真っ白いそれは、温度すら陶器みたくひんやりと冷たくて、どうしようもなく泣きたくなった。
そんなわたしに小さく微笑みながら、栞がわたしの名前を囁く。ひどく優しい声音。だいすきな、栞の声。
わたしは苦しかった。だって、他ならぬわたしこそが、栞をこんな風にしてしまったのだから。
「……そう、だよね。もう、こんなことやめよう」
何とか涙を堪えながら、ようやく、わたしは栞の瞳を見つめて呟く。イチが咎めるようにわたしを呼んだ気がしたけれど、わたしにはもう、栞しか見えていなかった。
記憶を集めてひとつの身体を取り合っている現状が、突然、とても馬鹿馬鹿しいことのように思えたのだ。わたし達は双子なのに、どうして互いに争って蹴落とし合わなければならないのだろう。どちらか一方だけが生きていたって不自然でしかないのに。栞にはわたしが、わたしには栞がいなければ、二人でなければならないのに。
「ごめんね、ありがとう、」
言いながら、ぺたりと、わたしは栞と額同士をくっつける。さっきよりずっと近くなった栞の瞳。疑問に揺れるそれに、今度はわたしが笑いかけて、そして、もう一度「ありがとう」と繰り返す。
わたしは唐突に理解した。全ての歯車が噛み合ったように、全てのピースが埋まったように。
それまでは不可解でしかなかった栞の行動。わたしの邪魔をしようとしているとしか思えなくてつらかったそれ。けれど、本当はそうではなかった。いつだって栞は、わたしを守ろうとしていたのだ(きっと、わたしは今までもこんな風に知らない内に、栞に守られてきていたのだと思った)。
それなのに、わたしは栞を傷付けてばかりいた。こんな風になってしまうまで、目を逸らして気付かないフリをしていた。それでも栞は、ずっとわたしだけを見ていてくれた。
だから、今度はわたしが栞を守るよ。わたしが、栞を愛するよ。
「どんな栞でもいいよ。汚くてもいいの。わたしは、栞がだいすきだから」
(ずっとずっと、ふたりは一緒だよね)