忍者ブログ
[23]  [22]  [21]  [20]  [19]  [18]  [17]  [16]  [15]  [14]  [13
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ZONE-00:憐児/title by 選択式御題
かなり前に拍手お礼にしていたもの。ギスギスした話。

「……くだらない」
「何がです?」

 吐き捨てるように呟いたわたしの声に、思いがけず返された低い声。ちらりと隣に一瞥をくれると、ゆるく笑んだ黒薔薇と視線がぶつかる。何故だか無性に腹が立って、わたしはそのまま黒薔薇を睨み付けてやった(わたし、あんたのそういう耳敏いところがだいきらい)。

「そんな顔しないでくださいよ。その程度で貴女の美しさが損なわれることはありませんが……やはり笑っている方がよく似合う」
「黙りなさい犬畜生が」

 困ったように、かなしそうに、黒薔薇はわらった。不快感を募らせるだけのわたしは目を逸らした。
 じわりじわりと、胸中に広がるのは薔薇の香りを纏う甘い劇薬。
 すべてを理解していながら、それでもわたしは何も知らないふりを続ける。悩むだけ無駄。想うだけ無駄。こんな感情に囚われるなんて愚かしいだけ。どうせ彼はわたしの騎士ではないのだ。まして、王子などでは絶対に有り得ない(嗚呼、苛々する)。

「触らないでちょうだい」
「……残念。気付かれてしまいましたか」

 もう一度、射るような視線を黒薔薇に返すと、彼は伸ばしかけた手をゆるりと下ろした。
 困ったような、かなしそうな笑顔。変わらないその表情に、吐き気がした(……ほら、どうせ届かないのよ。叶わないのよ)(馬鹿らしい感情。馬鹿らしい感傷。わたしを苦しめるだけの劇薬)。

「わたし、A型男もイヌもきらいなの。知ってた?」
「おやおや、随分と嫌われたものですね……。私は貴女に惹かれて止まないというのに」
「あら、存外見え透いた嘘を吐くのね」


(どうせ心は奪えないのでしょう?)

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
☆カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
☆プロフィール
HN:
壱原緋凪
性別:
女性
☆バーコード
☆ブログ内検索
design[dot×dot]
忍者ブログ [PR]