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かなり前に拍手お礼にしていたもの。ギスギスした話。
「……くだらない」
「何がです?」
吐き捨てるように呟いたわたしの声に、思いがけず返された低い声。ちらりと隣に一瞥をくれると、ゆるく笑んだ黒薔薇と視線がぶつかる。何故だか無性に腹が立って、わたしはそのまま黒薔薇を睨み付けてやった(わたし、あんたのそういう耳敏いところがだいきらい)。
「そんな顔しないでくださいよ。その程度で貴女の美しさが損なわれることはありませんが……やはり笑っている方がよく似合う」
「黙りなさい犬畜生が」
困ったように、かなしそうに、黒薔薇はわらった。不快感を募らせるだけのわたしは目を逸らした。
じわりじわりと、胸中に広がるのは薔薇の香りを纏う甘い劇薬。
すべてを理解していながら、それでもわたしは何も知らないふりを続ける。悩むだけ無駄。想うだけ無駄。こんな感情に囚われるなんて愚かしいだけ。どうせ彼はわたしの騎士ではないのだ。まして、王子などでは絶対に有り得ない(嗚呼、苛々する)。
「触らないでちょうだい」
「……残念。気付かれてしまいましたか」
もう一度、射るような視線を黒薔薇に返すと、彼は伸ばしかけた手をゆるりと下ろした。
困ったような、かなしそうな笑顔。変わらないその表情に、吐き気がした(……ほら、どうせ届かないのよ。叶わないのよ)(馬鹿らしい感情。馬鹿らしい感傷。わたしを苦しめるだけの劇薬)。
「わたし、A型男もイヌもきらいなの。知ってた?」
「おやおや、随分と嫌われたものですね……。私は貴女に惹かれて止まないというのに」
「あら、存外見え透いた嘘を吐くのね」
(どうせ心は奪えないのでしょう?)