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恋戦:半蔵/title by 選択式御題ヒロイン=忍。
ゲームヒロインとは別人です。
ヤンデレ?というよりは単に歪んだ話。暗いです。

(馬鹿ねえ)

 あたしは声を上げて笑い出したくなる衝動を必死にこらえる。けれど、くつくつと少しだけ、殺しきれなかった声が喉から漏れた。すると、あの男に付けていた監視役の忍が、報告を中断して怪訝そうな視線を向けてくる。「ああ、気にしないで。続けて頂戴」。あたしは何とか笑いを抑えて先を促した。
 それにしても、とんだ茶番じゃないか。天下にその名を轟かす服部半蔵ともあろう忍が、何処ぞの小国の姫なんぞにうつつを抜かしているだなんて。とは言え、腐っても服部と言ったところか、あの男も仕事は今まで通りこなしているらしい(それでも、あたしには弱くなったとしか思えないのだけれど)(忍としての有り様が、揺らいでいる)。おそらくは、だからこそあの方もここまでは目を瞑ってこられたのだろう。でも、それももうおしまい。
 遂に今日あの男は監視を振り切って、一時とは言え行方を眩ませた。そんなことをすれば角が立つことくらい想像に難くないだろうに。自分の立場を鑑みれば、大切なものほど遠ざけるべきだろうに。

(だって、あの方が手放してくださる筈ないもの)

 報告を終えた忍を下がらせて、あたし自身もくるりと身を翻す。嗚呼、早くあの方の下へ行かなくちゃ。我知らず、ゆっくりと口端がつり上がる。こんなにも愉快な気分になるのは、一体いつぶりだろう。
 これは好機だと思った。あたしがどんなに焦がれても、この恋は生涯叶わないと思っていたけれど。あたしの存在は、あの男の中に一欠片も残らないと諦めてきたけれど。あたしの持てる全てでもって滅茶苦茶に傷付けて、大切なものを根こそぎ奪って。からっぽになったその中に、絶望を、憎しみを、あたしを目一杯詰め込んで(そうしたら、貴方はあたしを忘れられなくなるでしょう?)(なんて、考えるだけで快楽が背筋を這い上がってくるじゃない!)。

「光秀さま、さあ、如何致しましょう」

 抑えきれない喜悦が滲む声。光秀さまはそれを聞いて呆れたような顔をした。


あたしの愛は、歪んでいるのだ(もうすぐ、貴方の大切なものを壊す命が下る)(忍の癖に下手な希望なんて持つからこうなるのよ)。
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